クメール遺跡について知っている二、三の事柄 INDEX HOME



■ クメール遺跡について知っている二、三の事柄


02、クメール遺跡の見方


「yayo」 と 「ふうみん」 の 対話

クメール遺跡を見学するに当たって、どんな所に気をつければいいのかしら?
そうだね。「ふうみん」が思うのには、次の2点の面から見るといいと思う。まず1点は、遺跡の歴史的な意味だ。これについては、クメール王朝の歴史で別に話をしょう。
もう1点は、建築学的、美術的な観点から見る事だね。簡単に云うと、その建物が美しいかどうかだね。
日本のお寺を見るのと同じね。何時、誰が、何の目的で建てたと云うのと、この建物は○○様式で襖の絵は○○で、庭は○○が造った。と云うことね。
まず、建築の材料が「レンガ」か「砂岩」か「ラテライト」か、あと「木材」で造られたかを気をつけて見ることだね。その中で「レンガ」を用いたのが一番古いみたいだね。
最初「レンガ」の上に漆喰を塗ってレリーフなどの装飾をしたが、はがれやすく耐久性に問題があり、次第に彫刻のしやすい「砂岩」に変わったようだね。
「木材」も建材に使われているのね。「yayo」は「石」だけだと思っていたわ。
「木材」は屋根を支えたり天井や扉などに使用されたが、遺跡にはほとんど残っていないんだ。特に、人々が日常生活を営む住居はほとんどが木造建築だったらしいね。アンコールトムにある王の宮殿も木造建築だったが、今やその跡形は全く無いね。
そうね、アンコールトムの宮殿跡は広場と木々だけだったわね。
タイのアユタヤやスコータイの仏教遺跡の建築物は「レンガ」や「ラテライト」だけで「砂岩」を使った遺跡は無いみたいだけど。
まさにいい所に着目したね。「砂岩」を使った建築様式がクメール遺跡の大きな特徴とも云えるんだ。
じゃあ、「砂岩」と「ラテライト」の使い分けはどうなのかしら?
「砂岩」については、構造材だけでなく、彫刻がしやすい赤色砂岩、青色砂岩、灰色砂岩などが仕上げ材として用いられ、「ラテライト」は基礎や壁や見えない部分の構造材として用いられたみたいだね。二つの材料を上手く分けて使いこなした例が多いんだ。
その他のクメール遺跡の特徴は?
あと、クメール遺跡の建造物はアーチ構造が用いられず、迫り出し構造なんだ。これでは、大きな室内空間を持つ建造物が建てられない大きな欠点があるんだ。
それで、十字型の回廊を空間に見立てた独特の建築様式になったと考えられるね。東南アジアでアーチ構造を持つの建築物は、ビルマのバガンだけだと云われているんだ。
クメール遺跡といえば、直ぐに頭に浮かぶのがあの素晴らしい「レリーフ」ね。あの「レリーフ」が彫られている場所はなんていうの。
主に「レリーフ」が彫られているのは「破風」と「まぐさ石」の部分だ。ここには、ヒンドゥー教の神話が彫られているので是非、ゆっくりと鑑賞してもらいたいと思うよ。特に、ヒンドゥー教の神々を覚えるといっそう面白いね。
特に「まぐさ石」は別項の「まぐさ石の年代別美術様式」に記したが、はっきりとした時代区分が確立しているから遺跡の年代も分かるしね。
それで、「ふうみん」はよく「レリーフ」の写真を撮っているんだ。遺跡が東を向いているので、日の光がよく当たる午前中に行こうってね。
そうだね。あと、「ナーガ」や「ナンディン」や「シンハ」の像と「リンガ」や「ヨニ」の像。それと「バライ」とか「塔門」や「祠堂」とかの建物本体だね。特に、寺院の建物の配置については、宗教観、宇宙観が複雑に絡んで解明されていない事も多い見たいだよ。
宗教観、宇宙観て具体的にはどう表現されているの?
クメール遺跡の寺院の中心には、プラプラーンと呼ぶチェデイが置かれ、神殿が築かれる。山頂や高台が選ばれるのは、ヒンドゥー教の聖なる山、カイラーサ山にあやかっていると思われる。
そして、バライは大海を意味し、壁や回廊は聖なる山を意味すると言われているんだ。
そう思って見ると、ミステリアスな部分がたくさんあるのね。
まあ、だから「ふうみん」がクメール遺跡に惹かれるのだと思うよ。まして、有名じゃあないイサーンのクメール遺跡に行くと、居るのはいつも我々二人だけだからね。
あの歴史から忘れられたような廃墟の建物を1000年もの昔に遡り、静寂の空間の中で過ごす時間が、とても素晴らしいんだ。


クメール遺跡の建築材
名前 レンガ(煉瓦) 砂岩 ラテライト(紅土)
表記 BRICK SANDSTONE LATERITE
意味 粘土を窯で焼いて造られたもの

最も古くから装飾と構造材として使用された

それぞれのレンガを丹念に擦り合わせて密着させて施行した
赤、青、灰色の砂岩がある

構造材だけでなく、彫刻がしやすいため仕上げ材ととして用いられた

モルタルなどの接着材を用いず密着させて積み上げた
熱帯で多く産出され、鉄・アルミニウムを多く含む石

日干しすると硬化すると同時に多孔質となる

建築物の構造用や基礎に用いられる


クメール遺跡の構造
名前 破風(はふ) まぐさ石(楣石) バライ
表記 PEDIMENT LINTEL BARAY
意味 まぐさ石の上のほぼ三角形の部分

レリーフで飾られている事が多い

妻飾りとも呼ばれる
建物の出入り口の上部に渡された石材

レリーフで飾られている事が多い
貯水池、聖池

大海を象徴している


クメール遺跡の木材使用例


珍しく創建当時の木材が残っているバンテアイトープ遺跡



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