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クメール遺跡の破風やまぐさ石のレリーフには、ヒンドゥー教の神様がたくさん彫刻されているけど、どうやって見分ければいいの? |
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まずヒンドゥー教には、一番偉い神様が「ブラフマー」、「ヴィシュヌ」、「シヴァ」と3人に居るんだ。この3人の神を三大神と言うんだ。
そして、この神様にはそれぞれ専用の持ち物と乗り物があるので、これを覚えるのが見分けるのに一番簡単だね。 |
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よく遺跡の写真の説明に、「ガルーダに乗るヴィシュヌ神」とか書いてあるわね。 |
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そうなんだ。下の表に区分けしてあるとおり、プラフマー神は「ハンサ」に乗り、ヴィシュヌ神は「ガルーダ」に乗り、シヴァ神は「ナンディン」に乗るんだ。孫悟空が筋斗雲に乗るみたいなものだね。 |
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乗り物に乗っていない時は、手に持っている持ち物で判断すればいいのね。 |
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その通り。そして、この三主神を覚えたら、次にそれぞれの神様の奥さんを覚えればいいんだ。 |
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奥さん達もすべて神様なのね。 |
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そうなんだ。奥さんも神様だし、その奥さんから生まれてくる子供達も当然のごとく神様なんだ。それに、先程の乗り物の動物も神様なんだ。 |
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みんな神様なのね。たくさん神様が居て、日本の八百万の神みたいね。 |
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そう、日本ともすごく関係があるんだ。寅さんで有名な柴又の帝釈天を始め、毘沙門天や梵天などの日本の神様で「天」の付くのは、すべてヒンドゥー教の神様なんだ。 |
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ヒンドゥー教って、日本にはすごく縁遠いと思っていたけど大違いね。 |
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考えて見れば、日本に伝わった仏教も発祥はインドだし、遡ればヒンドゥー教と同じバラモン教から出ているんだよ。特に密教の修法空間の聖性を守る十二天などはヒンドゥー教の影響が大なんだ。 |
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破風やまぐさ石には、「カーラ」がよく彫られているけど、あのカーラが食欲旺盛で自分の手足と体を食いつくし顔面だけになったと聞いて、顔面の意味が分ったわ。 |
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あと、キーワードとして「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」を覚えておくといい。
ヴィシュヌ神が大海の底にある「アムリタ(甘露)」という不死の薬を得る為に、神々と阿修羅達に命じて須弥山を軸として、ナーガを綱として大海を攪拌すると、海は乳海に変わりアムリタが生じたという一場面がよく彫られているからね。 |
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確か、カオプラヴィハーンのまぐさ石に彫られているのを覚えているわ。後は何と言ってもアンコールトムの南大門の石像とアンコールワットのレリーフね。
最初、なんでナーガで綱引きしているのかまったく分らなかったけれど、やはり少し勉強してから見ると、とても面白いワ。 |
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「乳海攪拌」といえば、遺跡にあるバライは大海を意味し、この乳海攪拌から得られるアムリタを得る為に設けられている言うね。 |
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ホント!「yayo」は、バライは単なる貯水池だと思っていたわ。乳海攪拌はしっかりと覚えたわ。後は? |
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「大蛇アナンタの上に横たわるヴィシュヌ神」も良く用いられるモチーフだね。
宇宙がまだ混沌の時代、ヴィシュヌ神は大蛇アナンタの上で眠っていた。やがて、彼の臍に1本の蓮の花が咲き、その中からブラフマー神が生まれ、その額からはシヴァ神が生まれたと言うんだ。 |
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聞いて見たかったんだ!何でヴィシュヌ神のお臍から、最高神のブラフマー神が生まれたの? |
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よく考えると変な話だね。多分、ヴィシュヌ神を信奉するヴィシュヌ派が三大神の中でブラフマー神よりもヴィシュヌ神の方が偉いと言う宣伝だね。いかにヴィシュヌ神の人気があったかの証とも言えるね。 |
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クメール遺跡の建築材 |
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名前 |
ブラフマー神 |
ヴィシュヌ神 |
シヴァ神 |
表記 |
BRAHMA |
VISHNU |
SIVA |
役割 |
宇宙の創造神で最高神
人気が無い
日本では梵天 |
太陽と維持の神
絶大な人気
化身の数は10種類でクリシュナ、ラーマ王子、仏陀など |
破壊と創造の神
リンガの形をとることが多い |
乗り物 |
ハンサ(鵞鳥神) |
ガルーダ(鳥神)
また、大蛇アナンタに横たわる |
ナンディン(雄牛神) |
持ち物 |
数珠、皿、方丈 |
棍棒、ほら貝、蓮華、輪宝 |
弓矢、三叉戟、髑髏の杖 |
奥さん |
サラスヴァティー(弁財天)
学問・技芸の神 |
ラクシュミー
愛、美、繁栄の神で理想的な妻 |
パールヴァティー
知恵の神 |
子供 |
クーベラ
富の神 |
カーマデーヴァ
愛の神 |
スカンダ
軍神
ガネーシャ
知恵の神 |
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ヒンドゥー教の動物神 |
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名前 |
ナーガ |
ガルーダ |
ナンディン |
ハヌマーン |
カーラ |
マカラ |
表記 |
NAGA |
GARUDA |
NANDIN |
HANUMAN |
KALA |
MAKARA |
意味 |
蛇の神
5つまたは7つのコブラの頭で表される
神秘的・不死として崇拝される |
神鷲
頭、翼、くちばし爪は鷲、体は人間で表される
ナーガの天敵で彼らの格闘シーンが多く見られる |
聖牛
シヴァ神の人気に伴って聖牛として崇拝されている |
猿の神
怪力と神通力を備え空を飛ぶ
ラーマーヤナ物語でラーマ王子を助ける猿軍団の将軍 |
死の神
建物の入口を守る怪物
食欲旺盛で自分の手足と体を食いつくし顔だけになった
閻魔大王 |
海の怪獣
神秘的、呪術的な力を持ち階段や排水口の装飾に使用される。
摩竭魚 |
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ヒンドゥー教の三大神 |
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ワットプーの三大神、右からヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマー |