クメール建築と経蔵 INDEX HOME



■ 「経蔵」言われる建物について


■「経蔵」言われる建物について(1)

他項の「王道・宿駅・施療院について」の中で、施療院の伽藍の中の長四角の建造物を、一般的に「経蔵」と言われているが、聖水を流すソーマスートラを設けた事例(Ban Khok Mueang)もあるために、現時点で「経蔵」と断定はできないと書いた。

メインサイトの「イサーンの大地走行2000キロプラス」の掲示板に、「タイ クメール遺跡を探し求めて」の運営者 T.I. さんから下記の投稿があった。

「Kuti Rushi Ban Khok Muang の北側側壁部を大きく撮った写真をUPします。
見にくいかもしれませんが、側壁に直角に中央が溝のようになったラテライト石が横たわっています。
すっかり忘れ去っていましたが、この石は何なのか?疑問に思ったような記憶があります。もしかしたら、これが Somasutra だったのかもしれません。」

…そこで、「経蔵」と呼ばれる建物について調べて見た。

「タイ クメール遺跡を探し求めて」のサイトより、Ban Khok Mueang




■「経蔵」言われる建物について(2)

クメール遺跡の中で「経蔵」と言われる建物がある。シェムリアップのアンコール遺跡のカンボジア人ガイドは、Library(ライブラリー・図書館)と説明する。

「経蔵」とは、その内部に経典などを納められていた建物と説明されるが、本当にそうだったのか?素人の「ふうみん」が見ても疑問だらけだ。やはり専門家も、本来建物が有していた機能に未解明な点が多く、「経蔵」の機能と建物の機能が合致していないと言う。


・この「経蔵」の名の由来

1911年、ジョルジュ・セデス(George Cœdès)はプラサットクナ遺跡(Prast Khna)から発見された碑文から、経蔵と思われる「この小祠堂」を指して、「この小祠堂は確かにプラサットクナのBibliotheque(ビブリオテック・図書館、経蔵)であった」と述べた。この論説により、一般的に「ビブリオテック・経蔵」が定着したと言われる。


・この説に対し、遺構を調査した結果

① 「経蔵と呼ばれる建物」の側壁上部に見られる数多くの小窓は「火を用いた宗教儀式」の換気口の役割と考えられる。

② 「経蔵と呼ばれる建物」の主室奥の壁面に壁龕(へきがん・ニッチ)が設けられているケースがある。そのため信仰対象物を収蔵したと考えられる。

③ 「経蔵と呼ばれる建物」の主室中央に仏像やリンガが残され、聖水を流すソーマスートラを設けた事例がある。

以上の事例から、「経蔵と呼ばれる建物」は「経蔵」ではなく「信仰対象物を奉ずる建物」の可能性が高い。

アンコールワットの経蔵と言われる建物




■「経蔵」言われる建物について(3)

タイのヤソトーンの寺院ワットマハタートの「経蔵」は、人工池の中に柱を建ててその上に「木造の経蔵」が建てられている。この様な「経蔵」の建物をタイ国内の寺院で良く見かける。

「経蔵」は仏典を保管するためシロアリや鼠の被害に遭い易い。そのシロアリや鼠の被害を防ぐ為に人工池の上に建てたと言う。

タイの隣国であるクメールの「経蔵」も、人工池のバライ(聖池)の上に「木造の経蔵」が建っていたが、長い年月の中で朽ち果てて無くなってしまった。…と考えて見ると、「ふうみん」はすごく歴史のロマンを感じざるを得ない。

ワットマハタートの経蔵



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